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CAFUAの吹奏楽譜〈芳賀傑作品〉
皆さまこんにちは^^
今日は2019年にお取り扱いを始めたばかりの、芳賀傑さんの作品をご紹介したいと思います。芳賀 傑(はが たかし)作曲
「水面に映るグラデーションの空」(レンタル楽譜)
第6回クードヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクール第1位・聴衆賞受賞作品(テーマ:平和)「星屑パレット」(販売譜)
17名から演奏可能な小編成版はこちら既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、「星屑パレット」は「水面に映るグラデーションの空」の後半部分をスピンオフ的に独立させた作品になっています。3分半ほどの演奏時間で美しい音楽を味わうことができ、アットホームなコンサートやアンコールピースにぴったりの作品です。
しかし、ただ後半部分を切り離したのかといえばそうではありません。最も(!)大きな違いは、“盛り上がりのピークからエンディングに入るときの和声進行”でしょう。
その境目の2小節だけに注目してみますと、
「星屑パレット」ではB♭7、C7から、低音にB♭の音を残しつつも全体はFの和音に進むストレートな進行です。
対して「水面…」では、十分なモーションでFに進むと見せかけてなんとG#m7(4th,9th)!へ進みます。
これは難しかったので作曲者の芳賀さんにお話を聞いてみました。「結構無理やりな進行ですが、あえていうとF dur :Ⅴ → 短2度下転調 E dur : IIIといった感じでしょうか」
「その後E durの III – IVの和音をたゆたいますが、Sop.SaxやFl.にはAisのリディア旋法の音が乗っかっています」なんということでしょうか…。これが、「水面」においては「え~~!!(そう進んだの!?)」そして「あ~~!?(そのまま終わっちゃった!)」という、衝撃と、強烈な余韻を生み、一方の「星屑パレット」ではまるで「安らかに天に昇りました」というような安心感となり、そうして“聞き終わった後の印象の違い”に大きな影響をもたらしていたんですね。
また新たな要素が芳賀さんの口から明らかになりましたので少し考えてみましょう。「その後E durの III – IVの和音をたゆたいますが、Sop.SaxやFl.にはAisのリディア旋法の音が乗っかっています」
はい…
Eのキーにおける長調とリディア旋法の構成音を見比べてみましょう!E長調:e fis gis a h cis dis (e)
Eリディア:e fis gis ais h cis dis (e)なんと、aとaisだけが異なる構成音なんですね。
演奏するにあたり、全体的にはE durの響きだけれども、自分のパートにだけ異質な音(ais)があるとなれば、不安に感じることもあるかもしれません。ですが逆に、「このaisがリディア音階のアイデンティティだ」と分かっていれば、かえって心強く、しっかり演奏しようという気持ちになれそうです^^音取りの難所をもう一つピックアップします。
「水面」において、「星屑パレット」として独立した部分に入る直前の和音は、A♭M7(9th)だそうです。
M7のgの音は特に取るのが難しそうですが、それが特徴的な音ですので、頑張って取りましょう!ピッチの他にも、音量や、タイミングのコントロールに気を使う部分が多い作品ですが、「こわごわ演奏する」のではなく「狙いすまして」、「勇気を持ち大胆にいこう」と考えれば意外と気持ちが楽になるかもしれません。
素敵な作品ですので、ぜひ沢山の方に演奏し、聞いてみて頂ければと思っております。「水面に映るグラデーションの空」は「響宴XXII」のCDで(演奏:神奈川大学吹奏楽部)、「星屑パレット」は楽譜の詳細ページにあるリンクから動画でお聞き頂けます(演奏:ウインドアンサンブル愛知)。
(文中では英語とドイツ語の音名表記が混在してしまいましたが、便宜上コードネームは英語で書かせて頂きました。何卒ご了承下さいませ。)*この記事は2020年1月3日にCAFUAレコードのFacebookページで公開されたものです。