• 神奈川大学吹奏楽部 交響曲「ワインダーク・シー」リリース

    Date: 2017.05.24 | Category: NEWS! | Tags:

    2000年以来、CAFUAが毎年リリースを続けている「神奈川大学吹奏楽部」の最新CDが、2017年5月24日にリリースとなります。1月4日に東京芸術劇場で開催された「第52回定期演奏会」を収録したライブ盤、注目はなんといっても、今もっとも注目されているジョン・マッキーの大作、交響曲「ワインダーク・シー」を収録している事でしょう。

    交響曲「ワインダーク・シー」(CACG-0262、税抜2,667円)

    ギリシャ神話の英雄オデュッセウスを題材とした約30分の交響曲「ワインダーク・シー」。2015年以降、吹奏楽コンクールで数々の名演が生まれていますが、全曲演奏のCD化は世界的に見ても貴重なものです。戦いを終えて帰還するオデュッセウスに待ち受ける困難の数々を音楽とした全3楽章の交響曲を、完璧な演奏で表現する神大の実力には舌を巻くばかりです。

    神大と言えば、2016年4月に亡くなった真島俊夫さんとの深い繋がりを忘れる事が出来ません。神大が演奏した真島さんの作品集は、さきごろ「真島俊夫 meets 神大」としてリリースさせて頂きましたが、今回の演奏会でも真島作品が演奏されました。

    前奏曲「アプローズ」は、定期演奏会と同じ日同じ会場で引き続いて開催された「Applause to Toshio Mashima ~真島俊夫メモリアルコンサート」で演奏されたライブを収録。奇しくも、CAFUAが初めて神大のライブCDをリリースした2000年の定期演奏会でも演奏された作品。そもそもは神大が全国大会5年連続金賞を達成し、招待演奏となった際に真島さんからお祝いとして贈られた作品でした。真島さんと神大との関係を、これほど象徴する作品はありません。

    「波の見える風景」は、1985年の課題曲として作曲され、真島さんの名を一躍有名にした名曲ですが、その後作曲者の手によって加筆改訂されたのが「波の見える風景(改訂新版)」です。神大は、これまでも定期演奏会で課題曲版を披露しており、CAFUAのライブ盤にも収録しておりますが、「改訂新版」を収録したのは初めての事です。より広大で壮大な印象が強くなった「改訂新版」、課題曲としての制約がなくなり、本当に真島さんが書きたかった音楽が詰め込まれているような印象を受けます。

    神大が定期演奏会で演奏する作品は、クラシックや吹奏楽オリジナルが多いですが、今回の定期では真島さんの「ベイ・ブリーズ」がアンコールとして演奏されました。真島さんの師匠である岩井直溥先生に捧げられたポップス曲ですが、当時岩井先生も真島さんも横浜に住んでおられたとの事で、同じ横浜にある神大とも縁の深い作品。神大の演奏でCDになるのは初めてですが、真島さん直伝のポップスが脈々と根底に流れている事がよく分かるワクワクするような演奏で、天国の真島さんもきっと喜んでおられる事でしょう。

    真島さんの師匠であり、また神大とも縁の深かった兼田敏さん。たくさんのマーチを書かれましたが、中でも「わかくさ」はウキウキするような楽しさが印象的で人気のマーチ。このCDの1曲目をすがすがしい気持ちで聴き始める事が出来るかと思います。

    2016年度の吹奏楽コンクールで神大が全国大会金賞を受賞した作品、リスト(田村文生編曲)の「バッハの名による幻想曲とフーガ」。今回は定期演奏会ですのでノーカット完全版での演奏。造形美、構成美をとことん追求した骨太の演奏は、同曲を演奏するあまたのバンドに最高のお手本になる事間違いありません。

    そして、この定期演奏会ではゲスト指揮者として淀川工科高等学校の名誉顧問である丸谷明夫先生を迎え、十八番である大栗裕「大阪俗謡による幻想曲」も演奏しました。日頃、淀工の演奏でコンクール等で演奏される「俗謡」とはまた一味違う、少し現代的でスタイリッシュな演奏となっております。

    第52回定期演奏会のライブ盤と言いつつ、これだけで既にベスト盤なのではないか、と思える内容の濃さで、またその全てにおいて完璧で完成された音楽を披露する神大吹奏楽部の実力には圧倒されるばかりです。一番の注目は「ワインダーク・シー」でしょうが、他の全ての曲が神大の実力、楽曲の魅力を余すことなく伝える名演ばかり。マーチ、オリジナル、アレンジ、古今洋邦の作品に、更にポップスと、吹奏楽の魅力が全て詰まったアルバムとなりました。吹奏楽を指導されている方には最高の模範として、また吹奏楽の鑑賞を楽しんでおられる方にも是非じっくり拝聴して頂きたいCDとなりましたので、是非お聞きいただければ、と思います。