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コンクール全国大会を“予習”しよう!-関西支部編
こんにちは~!
全国大会予習シリーズ、第4回目は、関西支部代表団体の自由曲からご紹介していきたいと思います。さっそく始めましょう!
昭和ウインド・シンフォニー
「真島俊夫 富士山~北斎の版画に触発されて~」
指揮:ユージーン・M・コーポロン、福本信太郎こちらのCDのタイトル曲になっている真島俊夫「富士山~北斎の版画に触発されて~」は、兵庫県の加古川市立中部中学校吹奏楽部が全国大会で演奏します。
今年の4月に惜しまれつつその生涯を閉じた真島氏。この「富士山」は、真島氏の代名詞ともいわれる、ジャポニスムシリーズの第3作にあたります。
近代フランスの音楽に造詣の深かった真島氏ですが、日本の浮世絵が近代ヨーロッパの音楽家たちにも多大なインスピレーションを与えていた事実をうけ、「自分も彼らに倣い、北斎の富嶽三十六景を見ながらインスピレーションをかき立てた」と語っています。この曲に付けられた欧文題は英語ではなくフランス語で、「北斎」のつづりは”Hokusai”となっていますが、「ホクサイ」と発音しては間違いなのかもしれません(フランス語では、”h”は無音であるため)。
逆輸入的な視点で書かれたこともあってか、日本人である真島氏の作品でありながら、どこか「日本って不思議なところだなぁ…」と、客観的に、新鮮に、見ている感覚が伝わってくるような気がします。そして、自他への敬意の概念や(人、生物、無生物を問わず)、冒頭に鳴り響く鈴の音による聖域の暗示、中間のホルンソロに込められる、呼吸のように自然で濃やかな情動など…魅力あるポイントが、溢れるほどありますね。実はこのCD、大変なご好評を頂き、一時的に出荷を停止させて頂く事態となってしまいました。9月21日以降、出荷を再開させて頂きます。ご購入をご希望の方には、ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。
同じく「富士山」を収録したこちらのCDは、現在も好評発売中です!
神奈川大学吹奏楽部
『楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り』
指揮:小澤俊朗真島氏と親交の深かった小澤氏のタクトによる演奏です。
それでは次へ参りましょう!
文教大学吹奏楽部
「M.アーノルド 第六の幸福をもたらす宿」
指揮:佐川聖二こちらのCDはなんと豪華2枚組なのですが、この2枚目の第1曲に収録されている長生淳「コンコルディア」を、大阪府の豊中市立第十一中学校吹奏楽部が全国大会で演奏します。
“コンコルディア”というタイトルは、”Concordia res parvae crescent,Discordia macimae dilabuntur.”-“調和によって小さきものは成長し、不調和によって最も大きなものも減衰する”という成句によっています。
楽曲のテーマには、「人間愛」「家族のような温かい雰囲気」「出藍の誉れとなるべく、日々成長」等があげられていますが、あらためて作品を聞いてみると、冒頭に現れた小さなつむじ風のようなフレーズの坊やが、温かく守られた家から冒険の旅に出て成長していく物語、またそれを見守る保護者・親心的な視点があるようにも感じられます。
大変技術的難易度の高い作品ではありますが、それと同時に、どれだけ「温かな人間愛」を聴衆に届けてくれるのか、とても楽しみで気になるところです。それでは、次の楽曲へ参りましょう。
文教大学吹奏楽部
「ラヴェル スペイン狂詩曲」
指揮:佐川聖二、柳田孝義このCDに収録されている、天野正道「アダージョ・スウォヴィアンスキェ ドゥルゥギェ」を、大阪府の明浄学院高校吹奏楽部が全国の舞台で演奏します。
「アダージョ・スウォヴィアンスキェ ドゥルゥギェ」とは、「スラブ風アダージョ2」という意味ですが、先に「アダージョ・スウォヴィアンスキェ」という作品があり、これをコンクールで演奏するために中間部に改訂をくわえたのが「アダージョ・スウォヴィアンスキェ ドゥルゥギェ」です。
この楽曲、“アダージョ”スウォヴィアンスキェといいますが、どれくらいアダージョ(遅い)なのか?と申しますと…
冒頭に書かれた速度標語、”Molto adagio (四分音符)=28”です!
四分音符が1分間に28回打つ速さ!想像してみて下さい!
楽譜を見て、演奏しようとしたら度肝を抜かれる遅さです(ちなみに中間部に改訂で加えられた速い部分は四分音符=144です)。
ですがしかし、この文教大学のCDでタクトをとったのは、演奏する天野氏の作品をことごとく“作曲者の意図より更に遅く、歌い込んで”演奏してきた佐川氏。
ある意味勝負ですね(笑)
音はといえば、冒頭は木管楽器のソロが連なり、普段は気にもかけない空気の重さ・粘り・その粒子の存在に注意が集まって、微妙で繊細な表現が際立つ部分があり、他方では激しくかつ豪華で美しい、ロマンティシズムに酔いしれるような部分があり、その濃さと薄さに「こんな空気があるのか」とため息が出そうな作品です。
もしかしたら、フィギュアスケート演技の音楽などにも合うかもしれません。それでは、次が本日最後の楽曲紹介となります!
神奈川大学吹奏楽部
『高昌帥 吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」』
指揮:小澤俊朗タイトルにもなっている、高昌帥『吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」』を、兵庫県の宝塚市吹奏楽団が全国大会で演奏します。
この作品は、力強いトゥッティで始まる第1楽章「衝動」、複雑で不安定なリズムが特徴の第2楽章「情緒」、冒頭の金管コラールをはじめ美しい響きが印象的な第3楽章「祈り」、第1楽章から第3楽章までの要素をすべて内包しつつ、大きな高揚感に包まれて堂々たるエンディングに至る第4楽章「陽光」の、全4楽章からなります。
これまでも数多くの団体が全国大会の舞台で演奏し、その作品の大きさ、長さゆえに、その演奏の内容も団体によって様々だったわけですが、今回の宝塚市吹奏楽団の演奏は主に第2楽章と第4楽章からの演奏になるかと思います。CAFUAレーベルの他のCDでも、抜粋版を収録したものはいくつかあるのですが、本日は全楽章をノーカットフルバージョンで収録した、神奈川大学吹奏楽部のCDをご紹介させて頂きました。本日も最後までお読み下さりありがとうございます。
「コンコルディア」、「アダージョ・スウォヴィアンスキェ ドゥルゥギェ」、『吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」』は、それぞれ演奏用の楽譜と閲覧用のPOST de
スコアをご用意しております(リンク先は各曲のPOST deスコアページです)。
ぜひ、CDとあわせてチェックしてみて下さいね。
次回もどうぞお楽しみに!!