-
小長谷宗一“ヨコスカの海と風”
こんにちは、楽譜担当です。
「ぶらりヨコスカ散歩」シリーズから少し間があいてしまいましたが、さる10月28日よりレンタルを開始致しました「吹奏楽のための組曲“ヨコスカの海と風”」について、ご紹介させて頂きたいと思います。
吹奏楽のための組曲“ヨコスカの海と風”
作曲:小長谷宗一
レンタル価格:34,560円(税込)「組曲」とありますが、内容は
第1曲 戦艦
第2曲 歌
第3曲 どぶ板通り
と、3つの曲からなっています。第1曲の「戦艦」は、とても大きく重々しい響きに海風が吹きつけるかのような様子が印象的。「海、風、船、軍隊、」まさにそれらの要素が感じ取れるでしょう。
海上自衛隊の艦上で実際に、伝令などに用いられているサイドパイプは、この第1曲中で「雑令」と「舷門送迎」の二つのパターンを奏します。
「雑令」は、「これから指令がありますよ」と注意を喚起する合図。曲中では「舷門送迎」よりも先に奏されます。
「舷門送迎」は、賓客もしくは隊の偉い方(司令以上、ということですが)を舷門(舷側の出入口)においてお迎え、お送りする時に奏される合図。曲中では、「雑令」の後に2度吹奏されます。見覚えのある方もいらっしゃるかと思いますが…
このパイプで奏でる音の種類に、「開音」「閉音」というものがありますが、ピッチの高い音が「閉音」と呼ばれていて、ただ吹いただけではどうも出せない音なのです。
CDの「海上自衛隊委嘱作品集:ヨコスカの海と風」の収録時には、わざわざサイドパイプの名手を召喚したのです! 良い音ですよ!そもそも、この曲は海上自衛隊横須賀音楽隊の委嘱作品でございます。
そりゃそうか。その他にも、一見シンプルに見えてちょっとひねりのきいたリズムも面白く、たとえば4つ打ちと裏打ちパートの掛け合いでは、ユーフォニアムが表でテューバ・弦バスが裏だったり。
よく見かけるリズムも、組み合わせ順列によって予想を裏切っていたり(油断なりませんよ!)、パート同士が組み合わさったシンコペーションの動きがあったりと、「これは!」と思う仕掛けが多数あります。
侮れないと同時に、それらのリズムがバンドに良い緊張感をもたらし、曲自体の雰囲気もよりまっすぐ厳かになっていくのではないでしょうか。第2曲の「歌」は、北原白秋の詞、梁田貞の曲による「城ケ島の雨」という歌の旋律が用いられています。「城ケ島に利休鼠の雨が降る中を小舟が行く、それを見ている私は忍び泣く」と、まるで絵画のような情景を歌っています。
城ケ島は三浦半島の突端にある島で、横須賀よりもさらに南にあります。「利休鼠」は色の名前で、緑がかったねずみ色のこと。
「暗く緑がかった雨越しに城ケ島を望み、舟唄を歌い櫓をこいで遠ざかる小舟を、泣きたい気持ちで(女性である“私”が)眺めている」と想像すると、この曲の表情も一層深いものになりそうです。第3曲の「どぶ板通り」は、はじめは5人のバンダによる演奏でスタートします。バンダバンドの一団が過ぎ去ると、様々な音楽が入れ替わり立ち替わり現れ、拍子やテンポ・リズムも変化してさながらジェットコースターのようです。
これが、「どぶ板通りというダウンタウンを歩いているということ?」
そうですね。一口にダウンタウンや、商店街などと言っても、色々なタイプがあります。
この曲にあるように、アメリカンな要素、少しせわしない雰囲気、活気や喧騒に、遠く聞こえる海の歌。これらを全部ひっくるめて、「どぶ板通りって、こんな雰囲気なのかな」と想像しながら演奏して頂けたら良いかと思います。
サイドパイプもスカジャンも売っていますし(笑)実際歩いてみて頂くのもおすすめ。
詳しくは「ぶらりヨコスカ散歩、②!」をご覧ください!このように、これからの演奏会シーズンにぴったりの作品なのですが、あるいはコンクールの自由曲としても演奏できるかもしれませんね。
先にご紹介したCDも好評発売中ですので、まだゲットされていない方はぜひチェックしてみて下さい。タイトル作品のほか、ぐるりよざ、「海の護りびと」「剱の光」「艦上の旭日」など、海上自衛隊らしく海を感じる作品が収録されています。
どうぞお楽しみください!