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楽譜紹介シリーズ〈2014.Autumn〉⑤!
こんにちは。
9月からお届けしてきたこの「楽譜紹介シリーズ〈2014.Autumn〉」も、今回が最終回となります。
短いシリーズでしたが、お読み下さった皆様、誠にありがとうございました。
来週からは、吹奏楽コンクール全国大会で演奏されたCAFUA取扱楽譜をご紹介していきますので、そちらもどうぞお楽しみに。それでは本文に入ります。
本日ご紹介するのは、「田中公平オン・ブラス!」シリーズから、
「勇者王誕生!」「檄!帝国華撃団」「御旗のもとに」「地上の戦士」の4曲です。これまで何度も楽譜を紹介していて今更ですが(笑)この楽譜シリーズに寄せた、作曲家田中公平氏の思いを、CDブックレットからかいつまんでご紹介します。
“日本には、世界に誇れる「アニソン文化」と、「中高生をはじめとした高水準のアマチュア吹奏楽文化」がある。
しかし、アニソンを吹奏楽で演奏するための楽譜などが充分に用意されておらず、演奏したくても容易に出来ない状況だった。
今回作曲者自身の監修と専門家によるアレンジで、楽譜とCDを発売したことにより、日本が誇る「アニソン文化」と「吹奏楽文化」で化学反応を起こし、両者の振興・発展の一助となりたい。”…抜粋でなく、CDブックレットに掲載している作曲家コメントの要約になりますので、お持ちの方はそちらもチェックしてみて下さいね。
このような思いを込め、作曲者、編曲者、CD、楽譜、関係者が力を合わせて皆さまのお手元にお届けすることになった作品たちです。今日も気合を入れて(笑)ご紹介していきます!
初めの曲はこちら♪
「勇者王誕生!《勇者王ガオガイガー》より」
作曲・監修:田中公平 / 編曲:杉本幸一
定価:4,000円(税抜)CWE-03310月1日に発売したばかりの新譜で、このCAFUA Now!ブログでご紹介したのも記憶に新しいところではないでしょうか。
私見としてこの作品の持ち味を列挙しますと、「感動、格好良さ、明るい未来、希望、次への期待」というものが上げられると思います。
コンサートでの使い方としては、オープニングもしくはエンディング、どちらにもおすすめですが、オープニングに使うなら「今日この日のコンサートがどんなものなのか」、プログラムやノリに対しお客様に音楽で意思表明する、そんな役割も務めてくれそうです。
エンディングに使うなら、2曲アンコールの先の1曲にして、間髪入れずに次の曲も演奏し、勢いや華やかさを出してみるのはどうでしょう。2曲目をラテン系楽曲にすれば、陽気さ、楽天性をプラスできます。
OPでもEDでも、「感動」の演出に一役買ってくれますし、照明を工夫するのもいいかもしれません。アンコールで、始め指揮者を入れずに暗転して、コンマスのキューで序奏を始め、指揮者入場、序奏が終わった曲本体から振る…な~んて演出も、面白そうです!では後半は、「サクラ大戦」シリーズの楽譜をご紹介していきます!
作曲・監修は田中公平、編曲は杉本幸一(敬称略)、価格は全て6,000円(税抜)です。
「御旗のもとに《サクラ大戦3~巴里は燃えているか~》主題歌」
CWE-030
「地上の戦士《サクラ大戦Ⅴ~さらば愛しき人よ~》主題歌」
CWE-032シリーズ作品として、一聴してそれと分かる「共通点」と、「相違点」のある作品群です。詳しく見てみましょう。
「共通点」として第一に挙げられるのは、2拍3連のリズムではないでしょうか。それも、調性外の音で構成されているため、とても強烈なインパクトがあって記憶に刻み込まれます。
他に、キャッチーなメロディや「強さ」の要素がありますが、こちらはむしろ一口にくくれない、内容の相違があります。まず、「檄!帝国華撃団」でいうと、華やかな出だしから、音楽で世界観を強く主張してきます。歌謡とロック、大陸要素も入っているでしょうか。これらも全て、時代や舞台の設定の表現と言えると思います。サックスなどにあるベタッとしたコードのしき方も面白く、珍しいものではないでしょうか。
曲のキャラクターとして「導入感」があるので、コンサートもしくはステージの第1曲目におすすめの作品です。
気持ちの良いメロディとサウンドで、スカッと爽快感のある気分を演出してくれます。
次に「御旗のもとに」についてですが、シリーズのなかでこの曲のユニークな特徴は、「少しまじめ、シリアス、悲観、影、優しさ、柔らかさ、晴れやかさ、憂い、寒さ」である…と申し上げたいです。少しの幸薄さ、も入れておきましょうか。
オリジナルの歌の時点で、シンセサウンドとクラシック楽器のクラシカルな用法を組み合わせており、そういうところも上記の特徴に繋がっているのではないかと思います。
AメロBメロはマイナーで陰をしょっていますが、サビメロに入るとメジャーに転調して陽になります。「第九的、苦悩から突き抜ける展開」と同じですね。
「寒さ」というのは、「心は熱く燃えているけれど、周りをとりまく気温は低い」というような…そこで「頑張っている」感じとか、「油断ならない」感じとか、ということなのですが、お分かり頂けるでしょうか。また、この曲の「強さ」は、「自分たちの幸福を侵す勢力はあるけれどそれを排し、戦いながらものびやかに謳歌して前進する」というような強さを感じます。
どちらかというと、ステージの終盤に向いているような気がしますが、いかがでしょうか。最後に「地上の戦士」について。やや「意表をついた」印象のある作品です。先のシリーズ作品があったからこそ生まれることができた。そういうふうにも感じられます。
音楽のスタイルはビッグバンドジャズで、オリジナルではシンセサイザーも効果的に使われていてスピード感があります。
少し斜に構えた、クール&ホットな格好良さが持ち味。シティーっぽさのなかにゴツゴツとした手応えがあるのは、開拓地であった荒野の記憶なのでしょうか。
この曲の「強さ」は、望みを叶えるために頑張る“タフネス”、そして予測できない展開(→ad lib.?)にも柔軟に対応する“しなやかな強さ”とも言えるのではないでしょうか。開拓者の魂をもって、朗々と歌い上げる。新世界を開く、この楽曲にあてたいイメージは「ネクストステージ」です。であれば、ステージでは後半に置いた方がしっくりくるかもしれませんね。これも、照明を操作して暗さをうまく使い、観客の視野を狭くしてあげると雰囲気が出て良いと思います。今回ご紹介した作品は、全てこちらのCDに収録されています。
田中公平 オン・ブラス!
指揮:水科克夫
演奏:航空自衛隊航空中央音楽隊
AVCL-25823最後までお読み頂き、ありがとうございます。
「気合を入れる」とは申しましたが、予想外に長くなってしまいました。
秋のコンサート向け作品紹介はこれで終了となります。プログラム選びに、また暇つぶしの読み物に、役に立てておりましたら幸いです。
次週からは全国大会の演奏作品、そしてその後も、また別の記事でお目にかかれたらと思います。
その際はぜひまたお付き合いくださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。CAFUAレコード
楽譜担当