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アンサンブル紹介リレー・その9
こんにちは。立秋を過ぎ、暦の上では秋を迎えました。「残暑お見舞い申し上げます。」
さて、本日ご紹介するのはこちらの作品です!
CEM-017
颯~Introduction and Fantasia~ / 挟間美帆(サクソフォン4重奏)
定価4,200円(税込)「颯」は一文字で「はやて」と読みます。
「颯」の字は「颯爽と」などの用法でよく使われていますね。
「はやて」という言葉は、「疾風」と書き表されることもあり、基本の意味は、多く寒冷前線に伴い「急に激しく吹く風」ということになっていますが…「颯爽」の「颯」ということで、この曲においては「さわやかに(そして少々素早く)吹き抜ける風」のイメージで考えてみましょう。
タイトルの”Introduction and Fantasia”の通り、曲は大きく二つのパートからなっています。
Introductionとなる短い序奏にはMisteriosoの指示があり、何か探しているような、どことなく荒涼とした風景のイメージが重なります。1分ほどで序奏から抜け出し、細かい音符を連ね重ねたフーガに突入しますが、まさにこのあたりから「風が巻き起こってくる」といった印象です。
16分音符ベースで細かい動きが続いて、テンポもアップ、変拍子、さらに次々と現れる臨時記号(しかも#系が多い)など、「速い」「難しい」というふうに見える要素が楽譜に並んでいます。
事実それなりの難しさもあるかもしれません。しかし…
ここではあえて、難しさを目立たせない演奏を目指してみてはいかがでしょうか。
練習を繰り返し、よく音を聴き込んでいくうちに、「風のうねりがスローモーションで見える」ような感覚にきっと辿り着きます。
4本の楽器が、4つの風になる。それぞれキャラクターは異なりますが、同じサクソフォンという楽器であり、ともに吹く風です。風が吹いて渡る中に、かけあいがあり、コンビネーションがあり、さらにコンビネーションの受け渡しがあります。風と風とは仲良しなのでしょうか。
この曲は、「音楽やアンサンブルを積極的に作りあえる、強い信頼に結ばれたチームに挑戦してもらいたい」、あるいは、
「この曲への取り組みを通して、技術の向上だけでなく仲間と一緒に音楽を作ることの楽しさや緊張感を知り、仲間同士の信頼関係を深めてもらえたら…」と、つい考えてしまいます。誰にでも親しみやすい、というタイプではないかもしれませんが、ぜひ「この曲を」と選んで下さる方に演奏して頂きたい作品です。きっとまた、音楽の深みに一歩近づくことが出来るでしょう。
「颯~Introduction and Fantasia~」は、こちらのCDに収録されています。
CACG-0137
ヤマハ吹奏楽団 アンサンブル委嘱作品集
定価 2,500円(税込)併せてお楽しみいただければ、幸いです。
楽譜事業部 高橋