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本日発売!「ザ・メリディアン」【前編】
本日、厚木高校吹奏楽部のCD「ザ・メリディアン」が発売になりました。
ジャケットとCDケース中の絵はクリムトで、美しいパッケージにも注目です。
「ザ・メリディアン」
厚木高等学校吹奏楽部
指揮/中山鉄也 ナレーター/ジョージ・ノエルズ
定価2,800円(税込) CACG-0199価値ある楽曲を選び抜いた抜群の選曲です。
ブックレット内にある中山鉄也氏の解説も充実しており、是非CDを聴きながら解説を読んで頂きたいです。
少しだけ、ブックレットの解説を用いながら各曲を紹介していきます。ヘスケッスの「ウィルリギッグ」。「ウィルリギッグ」とは“こま、風車”などの回転するおもちゃ、また“回転運動”を意味し、細かい音符が並ぶ楽譜ですが、小動物が飛び跳ねるような様子が思い浮かび、演奏は秀逸。表現力を見せています。
中山氏はこの曲について、“熟練したオーケストレーションがどことなくシュトラウスの《ティルオイレンシュピーゲルの愉快な悪戯》の縮小版を連想させ(ただしこれはハッピー・エンドです)、これからのレパートリーとして長く演奏されていく曲だと思います。” と語っています。回転する雰囲気が出ている快演でCDのオープニングに相応しく、作曲家としてのヘスケッスの引き出しの多さにも驚かされます。「車窓に広がる穀物畑 ~アーサー・ダヴの同タイトルの絵より」は、ティモシー・マーが画家のアーサー・ダヴの絵からインスピレーションを得て、書かれた作品。
“3音間をランダムに移動する8分音符が列車の進行を表しており、これを伴奏に従えて車窓に広がる風景が、次々に展開されていきます。遥か地平線上の殆ど動かない山々をゆったりとした旋律で、列車に近い建造物や小動物などは16分音符を多用したリズミカルな旋律で表現されていきます。”
音楽で見事に表現された、ティモシー・マーの独特の魅力が伝わる作品です。「バッカナール」とは、「バッカス」(ディオニソス)を崇拝する祭りに際して行われた踊りのことを指し、そこから派生して“生き生きとした”、“元気あふれるもの”、という意味にも使われています。
“作曲者は、吹奏楽の編成で使用される多くの管楽器や打楽器、それらが醸し出す無限の音色や和声の組み合わせに、夢中になって書いていたそうです。純粋に《バッカナール》の意味と言葉から派生した“騒々しい、元気に溢れた、活き活きとした”ということを音楽で表現しようとしたということです。”
この作品の魅力を楽譜から読み取り表現した厚木高校の演奏は絶品です。日本でもすっかりお馴染みとなったギリングハムが2009年に作曲した「グロリファイド エンゲルバーグによる幻想曲」。アイルランドの作曲家、チャールズ・スタンフォードの《エンゲルバーグ》という作品をもとにしています。曲は《エンゲルバーグ》を元にした5つの幻想曲、2つの間奏曲、前後に登場する〈序奏〉、〈終曲〉の9つの部分で構成されています。
“日本で大ヒットした《ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス》の続編のようで、(〈第4幻想〉のスケルツォの打楽器群は《ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス》の変拍子の部分を彷彿とさせます)、またそれよりも難しくなく、演奏時間も短く、何よりも親しみやすいので、これからのレパートリーになると思います。”
ギリングハム氏と親交の深い中山鉄也先生ならではの解釈で、曲の良さがストレートに伝わる演奏です。まだまだ日本では知られていない楽曲や作曲者ではありますが、この解説を見ながら聴くと楽曲の持つ力や秀逸さがよく分かります。是非、この機会に知って頂き、“なるほど!”という体験をして頂きたいです。
あとの3曲は、また次回。