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レンタル楽曲紹介『「神秘の花」-ギュスターヴ・モローに寄せて』
先日先行販売を開始いたしましたCD『福岡工業大学吹奏楽団「P.チャイコフスキー:交響曲第4番」』に収録されております、CAFUAレンタルライブラリー取り扱い楽曲についてご紹介します。
『「神秘の花」-ギュスターヴ・モローに寄せて』 / 八木澤教司
演奏時間:約7分半
レンタル価格:29,400円(税込)さっそく気になるポイントが出てきました。一つずつ見ていきましょう。
「神秘の花」と「ギュスターヴ・モロー」ですが、「神秘の花」は「ギュスターヴ・モロー」が描いた絵画作品のタイトルなのです。
ギュスターヴ・モローは19世紀フランスの画家で、「象徴主義」というスタイルの先駆的存在です。「象徴主義」は、宗教的あるいは神話的な主題を、暗示的・象徴的に表現するスタイルで、その幻想性や神秘性、画法の単純化や平面化が特徴として挙げられます。
そんな「象徴主義」の先駆者たる画家モローが、「神秘の花」と名付けて描いた作品の題材は…
「白百合の玉座に坐する聖母マリア」。
これがメインになっています。玉座のモチーフとなっている白百合は、聖母マリアの象徴であり純潔を意味します。
膝の上に十字架を掲げたマリアの、頭上には白い鳩が…こちらは、父なる神と一体として考えられる「聖霊」です。
こうしてお話ししていくと、「象徴主義」のスタイルに沿い、宗教的主題を用いた絵画のイメージが湧いてくることと思います。ところがしかし。
「神秘の花」(Fleur mystique)の画像は、インターネット上でも見ることが出来るので、興味をもたれた方にはぜひご覧になって頂きたいと思います。
聖母マリアの坐する玉座の、足元には殉教者の屍が重なり、背景は切り立った岩山などの殺伐としたもの。玉座から滴る血、無表情ながらもぎょろりとした目で何かを見据える聖母マリア…一種独特の恐ろしさが漂います。
この絵画の意味するところは、『死して(殉教して)なお白百合として神と共にある、キリスト教(カトリック)の勝利』ということらしいのですが、それだけでいいのか?と門外の者として気になってしまうところです。
楽曲の(やっと戻ってきました)作曲者・八木澤氏も、言葉を失うほど絵画に魅入ってしまう経験はこれが初めてだったと話しています。
さて、八木澤氏による吹奏楽曲は、2006年にヤマハ吹奏楽団からの委嘱を受けて作曲されました。ソナタのスタイルをベースに、「どんなに難しくても良いから、書きたいものを」というオーダーのもとに書かれたものです。
楽曲中には、Espressivo,Feroce(野生的に激しく), Tranquillo,Serioso, Misterioso,Grandioso,などの楽想標語が書き込まれています。音から受け取れる、例えば光のイメージも、かすみがかった空気に差し込むような光なのか、ダイヤモンドダストのようにきらきらと輝く光なのか。歌一つとっても、祈り、憂いや畏れを含んでいるのか、昇華して天を讃えるような歌なのか…色々なヴァリエーションがあるのだということを、気付かせてくれると思います。
宗教的絵画に端を発したものと知っているだけでも音は変わると思いますが、例えば曲中で使用されるイングリッシュ・ホルン(コール・アングレ)などは、宗教音楽(ミサ曲など)において福音をもたらす者=エヴァンゲリストという役割を担うこともあります。
ぜひ、少々深く読み込んで頂き、味わい深い響きを楽しんでいただければと思います。
次回は、同じく『福岡工業大学吹奏楽団「P.チャイコフスキー:交響曲第4番」』収録の「Six Sticks」(小長谷宗一)についてご紹介いたします。
楽譜事業部
高橋