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アンサンブル紹介リレー・その31
こんにちは。今日は晴れて日光が降り注いでいますが、なんとなく夏とは違う空気になったと感じられる茅ヶ崎から、お届けします。
本日ご紹介するのは、こちらの作品です。
CEM-029
巡礼歌 / 松下倫士(木管8重奏)
定価4,410円(税込)フルート、2本のBbクラリネット、バスクラリネット、ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスからなる8重奏曲です。
今回も、タイトルと作品の背景について少しご紹介していきたいと思います。タイトル「巡礼歌」
ここでいう「巡礼」とは、四国に88ヶ所ある弘法大師ゆかりの霊場を巡拝することを指しています。「四国遍路」とも呼ばれるものです。
「(お)遍路」は、もとは仏僧の修業として行われていましたが、江戸時代ごろからは庶民にも浸透していきました。楽曲の題材となった人形浄瑠璃「傾城阿波鳴門(けいせいあわのなると)」も、江戸時代の阿波は四国の徳島、物語の舞台は大阪となっています。背景・ストーリー
物語の登場人物は、父・母・娘の3人。親夫婦は、くにで仕えた主君の名刀が何者かに盗まれてしまったために、娘をその祖母に預けて詮議のため大阪に潜伏していました。時がたったある日、夫婦の住居に巡礼の若い女が訪れます。巡礼者には托鉢・寄進を行う(「おもてなし」などともいう)慣習があり、母は巡礼の女に食物などを与えました。ところが、話をしていくうちに、巡礼の女はその幼き日に夫婦がくにに置いてきた実の娘だということを母親は悟ったのです。娘は長じて、実の両親を何とか探し出して会いたいという思いから、たった一人で旅を続けてきたのでした。
「私がお前の母だよ、」と今すぐに言えたら…しかし、大阪では盗賊として住みつき、近頃は同志達が次々に捕まっていて詮議も潮時という折に、親子と分かれば娘にも危害が及ぶかもしれない。そのような思いから、一旦は事実を告げずに金子だけ持たせて送りだしました。いや!「いま別れてはもう二度と会えないに違いない」と思った母親は、一度は送りだした娘を追って、自分も家を飛び出していくのでした。しかし娘はその後、母親ではなく父親に偶然出会い、悪漢につかまっているところを助けられたのですが、父親はその女が(実の娘とは知らぬままに)金を持っていると知って無理やり借りようとしたあげくに誤って女を殺してしまいました。そこに母親が現れ、死なせてしまった女が夫婦の実の娘だったことが明らかになる…という、悲劇になっています。
もとの話の説明が長くなってしまいましたが、娘が「両親に会いたい一心で一人で旅をしているが、一人者は宿に泊めてもらえず、野や道端に寝たり、ひとの家の軒先で寝ては叩いて追い払われたり…」というのを聞いて、母親はどんな思いだっただろうか、父の心は、娘の心は、と思いを巡らせていくと音楽の表現も変わるでしょう。
楽譜上には、要所に楽想標語が設定されているので、それが場面転換の手掛かりになります。パワーのある楽器編成、ドラマティックな音楽作品となっておりますので、ぜひそれらの力を最大限に活かして演奏して頂ければと思います。
第33回全日本アンサンブルコンテストでは、東京都立小山台高等学校吹奏楽部が演奏して、金賞を受賞しています。その演奏は、こちらのCDに収録されています。
CACG-0154
第33回全日本アンサンブルコンテスト(中学・高校編)
定価4,200円(税込)アンサンブルフェア実施店舗では試聴CDもご用意しておりますので、お近くの方は是非お立ち寄りください。
楽譜事業部 高橋