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秋のレンタル楽譜紹介⑩シンフォニックダンス
こんにちは。風に光に、冬の気配が増してきた感じがしますね。10回シリーズでお届けしてきた「“秋の”レンタル楽譜紹介」も、本日が最終回となります!
最後にご紹介するのは、こちらの作品♪
シンフォニックダンス/福島弘和
演奏時間:約9分
レンタル価格:28,000円(税抜)今年3月に行われた「21世紀の吹奏楽 響宴XVI」で演奏され、JBA下谷奨励賞を受賞した作品です。
おおたウインドオーケストラの委嘱により2010年に書かれたこの作品の着想は“極楽鳥の求愛のダンス”から。ゴクラクチョウの仲間は、外界から遮断されたニューギニアやオーストラリアの一部地域に生息し、非常にユニークな進化を遂げました。“華美な飾り羽を持ったオスが、美しく激しいダンスでメスを魅了し、より美しく生命力あふれるダンスをしたものが子孫を残す”という独自のルールから、何世代もかけて、その美しさに磨きをかけてきたのです。ニューギニアにすむ人々の間には、「極楽鳥信仰」とも呼べるような精神が伝わっています。夢のように美しい羽根を持ち、中空を優雅に舞う極楽鳥は、土地の人々の祖先の魂、人の魂である…と考えられてきたのです。
大型で美しい蝶(揚羽蝶など)をみて、「あれは人の魂だ…」ということがあるのに、似ていますね。
ニューギニアの人々は、自分たちのくらしの儀式に、極楽鳥の求愛のダンスをまねた動きを取り入れたりもしてきました。そんな極楽鳥の姿かたち、生態に着想を得て、福島氏は激しく生命力に溢れ、どこか原始の営みを思わせる作品を書き上げました。1曲のうちに様々な拍子が現れ、「拍子感、ビート感を大切に演奏して欲しい」と話しています。
音組織、使用した楽器、それらで奏でるリズムの全てが相まって、独特の世界を作り出しています。特に打楽器が大活躍!していますので、ぜひ注目して頂きたいところです。
そして独特の音組織…音列、音階と言い換えてもいいのですが、楽譜にしたらどんなふうに書いてあるのか?
ここでお見せすることも出来ないのですが…ぜひ一度見てみて頂きたい!エンハーモニック(異名同音)変換を多く用いた記譜になっています。「転調しているわけでもないのに、一つの小節にシャープもフラットもあるって、どうゆうこと?」と思われる方も、いらっしゃるかもしれませんが、ここでは一つ、「臨時記号があることで、1個1個の音のルーツがわかる」と考えてみてはどうでしょうか。
「その音がどこに解決したがっているのか」「どんな音階や和音から派生したのか」「どこから来てどこに行くのか」そういうことを、臨時記号が教えてくれます。
マニア心をくすぐる記譜なんです(笑)
だからほら、日頃から、「AisってBでしょ。ややこしいわー」とか、言っちゃダメなんですよ?
同じにも見えるけど、やっぱり違うものなんです。閑話休題。
リズムのヴァリエーションも豊富なこの作品ですが、どうもここは“鳥”ではなくて“人”の踊りではないか?と感じられる箇所があります。
鳥と、人と、ダンスと。躍動する生命の力と、原始よりつらなる営みを。
シンフォニックにまとめてみた、そんなふうにも表現できる気がします。まだまだ新作ですので、「今までやったことがない曲を!」とお探しの方、ぜひこの「シンフォニックダンス」をチェックしてみて下さい。響宴のCDが、ブレーンミュージックより発売中です。
21世紀の吹奏楽「響宴XⅥ」
ブレーンミュージックBOCD-7492・7493
(「シンフォニックダンス」の演奏:龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部)さて、最後までお読み頂き誠にありがとうございます。拙い文章ではございましたが、少しでも楽しんでいただき、また楽曲について興味を持って頂けていたら幸いです。
また折に触れて、このような記事をお届け出来ればと考えておりますので、その際はまたぜひお付き合いくださいますよう、宜しくお願い申し上げます。楽譜事業部
高橋