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秋のレンタル楽譜紹介⑥百済伝説による交響組曲「神門物語」
こんにちは。10月に入り、ようやく秋も深まってきたのではないでしょうか。
本日は、演奏会のメインプログラムにおすすめの、こちらの作品をご紹介いたします。
百済伝説による交響組曲「神門物語」/ 真島俊夫
演奏時間:約20分
レンタル価格:36,750円(税込)「神門物語」の「神門」は地名で、場所は現在の宮崎県、美郷町にあります(美郷町は、2006年に南郷村、西郷村、北郷村を合併してできた町で、むかしは氷上郷と呼ばれた南郷村の中に、神門という地区があります)。
美郷町南郷区神門には神門神社という神社があり、大山祀命(おおやまずみのみこと)と百済国伯智王(禎嘉帝)を奉っているのです。百済伝説による交響組曲「神門物語」は1992年、宮崎市民吹奏楽団の委嘱により作曲されました。
7世紀頃、朝鮮半島の百済国が唐と新羅の連合軍に攻め込まれ、百済王一族が日本に逃れて神門に辿り着いたこと、後に王たちが一族討伐の追手の手にかかろうとも、神門の人々が百済の高度な文化を継承し、百済王一族を神として崇め神社に奉ったこと、それらを後世に伝承する祭りは現代にまで受け継がれていること…などのエピソードをベースにして書かれた作品です。組曲は以下の4つの曲からなっており、第3曲と第4曲は続けて演奏されます。
第1曲 百済国の繁栄と黄昏
第2曲 氷上郷の山々と祭り
第3曲 百済王一族を守る戦い
第4曲 おさらば 平和への賛歌この作品の面白さは、ひとつに音楽からはっきりと感じ取れる朝鮮と日本の音楽のコントラストが挙げられます。
“第1曲 百済国の繁栄と黄昏”は、ほぼ全体が朝鮮風の響きになっています。ベンディングも含むソプラノサクソフォーンのソロをはじめ、旋律にみられる節回し、”Korean”と指定された打楽器群(Bass Drum, Gongなど)の響きと、それらを使用した特徴的なリズムパターン、さらにいえば曲が始まってすぐの和音グループについた接頭音や鳥のさえずり(を模した高音群)にも、「The 朝鮮(百済)!」という要素が沢山盛り込まれています。
それに対比させたのが“第2曲 氷上郷の山々と祭り”で、こちらは全体がいわゆる日本らしさでまとまっています。宮崎の神門があるあたりは九州山地の東麓にあたり、平地が少なかったために、山の傾斜地を使って焼き畑農業を行っていました。稗(ひえ)や粟(アワ)、蕎麦などの雑穀の栽培を行い、その生活の中で生まれ今も歌い継がれているのが「稗ちぎり唄」をはじめとする数々の民謡です。
“第3曲 百済王一族を守る戦い”では、百済王一族討伐の追手から一族を守る戦いが勃発し、ここで一族は滅んでしまうのですが、続けて“第4曲 おさらば 平和への賛歌”に入っていきます。朝鮮風の旋律と日本の祭りの音楽を融合させて、百済王一族への愛と尊敬を歌い、スケールを拡大して、大自然への感謝と未来永劫の祈り、人類すべての幸せに願いを込めて堂々と曲を閉じます。
神門神社では、同じく宮崎県の木城町にある比木神社と合同で“師走祭り”という祭りを行っています。百済王一族のうち、神門に伯智王が辿り着いたのは先に述べた通りですが、その子である福智王は木城町に至り、土地の住民の尊崇を集めて死後には比木神社に祭られました。現在も年に一度、比木神社の福智王が神門神社の伯智王を訪ねる…という行事が、この師走祭りという形で受け継がれています。
朝鮮と日本の民謡というキャラクター、百済伝説のエピソードを持ち、世界平和と人類全ての幸せを願う、大きな愛を込めた作品です。
演奏はこちらのディスクで聴くことが出来ます。
真島俊夫 百済伝説による交響組曲「神門物語」
指揮:稲垣征夫
演奏:NEC玉川吹奏楽団2001年7月の定期演奏会と、6月に行われたチャリティーコンサートの演奏を収めた、ライブディスクとなっております。
CAFUAレンタルライブラリーでは、“百済伝説による交響組曲「神門物語」”の他にも、真島俊夫作品を多数お取り扱いしております。
交響詩「フォルモサ」
吹奏楽のための交響詩「美しき山の歌」
さくらの花が咲く頃
ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
不滅のベートーヴェン(真島俊夫編曲による、ベートーヴェンの名曲メドレー)作品の音源についても、各詳細ページでご案内しておりますので、ご覧頂けますと幸いです。
シリーズ第7回の掲載は10月15日(火)の予定です。どうぞお楽しみに。楽譜事業部
高橋